不動産価格高騰と空き家増加の関係性
近年、日本における空き家の数は年々増加傾向にあります。空き家が発生する主な原因は、需要に対して物件数が多い「家余り」です。これまで述べてきた人口減少や少子高齢化の他、新築建設の過剰促進、相続問題なども複雑に絡み合い、現在のような状況を生み出しています。ここでは主に不動産価格に焦点をあてて、現在の空き家問題を浮き彫りにしてみたいと思います。
不動産価格の高騰
下の図は昭和50年から令和6年現在の地価公示全用途平均の推移で、
日本の土地は1991年にピークを迎え、2002年までの11年間下落し続けます。その後、一時的に価格が上昇しますが、2008年にはリーマンショックが発生し再び下落に転じました。
出典:「変動率及び平均価格の時系列推移表(令和6年地価公示)」(国土交通省)
近年、不動産価格が上昇している主な理由としては「金融緩和によるインフレ」や「円安による外国人投資家の不動産投資額増加」が挙げられます。また住宅価格が上昇する原因として、ウッドショックやオイルショック、人件費の増大なども考えられます。資材の多くを輸入している日本の住宅事情では、資材の価格高騰のほか、円安加速によるスタグフレーションを起こし、住宅価格の上昇に大きな影響を与えています。建築費の高騰が新築マンションや新築戸建ての価格上昇に繋がり、中古物件の需要が増え、中古物件の価格上昇を促す結果となります。不動産価格は、賃貸市場にも影響を及ぼします。賃貸物件の家賃が値上がりすることで、空き家が増える可能性が示唆されます。また不動産価格上昇により、投資目的での住宅購入が増加する結果となりました。資産価値を見いだして購入した住宅は、高度経済成長期には「収益物件」として資産活用のリターンがありました。経済成長率が停滞した現在ではリスクが高く、買い手、借り手がつきにくい現状にあります。その結果、居住者がいないまま空き家として放置されるケースが増え、賃貸住宅空き家の増加現象が発生します。 現に、現在の空き家増加を招く主な原因の半数以上が、この賃貸住宅空き家によって形成されています。
出典:「令和5年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局))
他国の不動産と比較して割安感がある日本の不動産は、外国人投資家から需要があり、近年の円安の影響も人気に拍車をかけています。このような現象は都市部を中心に動きが目立ちますが、地方都市では都市部程取引量は無く、また多くの複合的な経済情勢が複雑に絡み合い、放置される空き家増加を促進させています。
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